第二話 もう一人の自分

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 眼を細めて笑う彼女の顔もまた、どこか幼気で愛らしい。  「あはは、そうだよね。  いきなりこんな事を言われても、信じるの難しいよね。  でもね、この見えてる景色。山や湖、青い空や空気、温度。あと、今も微かに聴こえてるジャズ。  これも全部、私の弟が作ったの。  凄いでしょ? この世界」  理解の追い付かない私は、湖畔の芝にちょんと腰かけて座る。  「……確かに風景も綺麗だし、この音楽も落ち着きますけど……ちょっと寂しいですよね。  貴女以外、ここには居ないんですか?」  女性もまた私に肖り、隣で腰かける。  「そうね……私は何というか、門番……じゃないな、お留守番って感じかな。  弟をここで見守りながら、ずーっと待ってるの。もう25年以上ね。  弟もだいぶ大きくなったよ。  冴えない陰キャだった生真面目メガネオタクがさ、必死になって自分磨きして、可愛い年下の彼女出来てさ、もうそろ結婚するらしいよ。  でも弟は、まだここに来ちゃダメなんだ」  彼女は尻を軽くほろいながら、天を仰いで立ち上がる。  「弟が来るには早すぎるもの。  でもね? 弟も失った人や物が多すぎるの。  ホント、エゴイストな性格は昔から変わらなくて、人を傷つけ、人に傷つけられて疲れたり、人間不信になっちゃってさ。  寡黙な奴なんだけど、私には何となくわかるのさ。  アイツ本来の優しさ。  自分の経験したことのない人の辛さも、真似事で良いから勝手に汲み取ろうとしてさ。  余計なお世話だよね。  辛いときは都合よく助け呼ぶし、情けないのに。  格好つけて維持張って余計にダサいことしてんのに」  呆れた表情で、彼女は自身の弟について語り続ける。  すると彼女は不意に、私の名を告げる。  
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