第二話 もう一人の自分

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 「……あれ、君。綾音ちゃんって言うんだっけ?」  「ええ、そうですけど……  どうして私の名前を?」  問いばかりの私に、皮肉にも彼女は肝心な要点に茶を濁す。  「ヒ、ミ、ツ。  なんとなく、だよ。  それよりも、本題に戻ろうか。  何故、貴女がここに居るのか。  聞きたいでしょ?」  まるでクイズ番組の司会者の様な、陽気なノリについていくのもやっとだが……  そろそろ私はもどかしくなってきたので、本題を切り出した。  「おねえさん、早く教えてくださいよ」  「まー、そう慌てないこと。  まずは深呼吸して、リラックス……そう、リラックスして……  聞く覚悟は出来た?」  まったく、焦れったい。  しかし陽気な彼女と裏腹に、私の動悸が激しくなる。  その動悸は、私の心臓をまるで突き破るように苦しくなった。  息ができない。  それでも、彼女から答えが聞きたかった。  「ちょっと、大丈夫?  まあそろそろ時間も残ってないし、言うね。  ……貴女、従兄のケイちゃんと一緒に峠のP帯までドリフトしに行ったでしょ?  そこで事故を起こして、貴女が生きるか死ぬか……"運命"が揺らいでるの」  「それって……私、生死を、さ迷ってる、って事……ですか………」  彼女は黙って首を横に振る。  それから彼女は、私の周りをゆっくりと、歩いて回り始める。  「うーん…惜しいけど、ちょっと違うかな。  正確に言うと、貴女は理解できないかもしれないけど、事故を起こした直後に時間が止まって、私も何故か知らないけどこの世界に貴女が迷いこんできた。  現世の貴女は時間停止していて、貴女の乗っていたロードスターは、目の前の太い枝がフロントガラスを貫通している。  コンマ何秒か後に、貴女の頭に枝が刺さって即死するか、それとも奇跡的に間一髪、枝が逸れて助かるか否かってところ。  私の役目は、死期が訪れた人間の、救済…んー、違うな……保険、じゃなくて……選別、でもないし……  もう、なんだろうね?  私にも分かんない」  なんだこの適当な女……  人が死にそうな危機的状況に超常現象を勝手に起こされて、曖昧な受け答えしかしてくれないなんて。  狂ってる。    
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