第二話 もう一人の自分

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 「あの、おねえさん……私、当たり前な事ですけど死にたくないです。  もうふざけた事言わないで、早くその私の状況どうにかしてください」  ワナワナと眉間が震え、必死に感情を抑える私。  彼女は人差し指を自身の顎にあてがい、数秒ほど考え込む。  「んー、そうだねー……じゃあさ。  あと何年後かは分からないけど、綾音ちゃんには試練を与えてあげよう。  もうどうしようもなく辛くて、人生から逃げ出したいって感じたとしても……  貴女は天寿を全うしない限り、もうこの世界には二度と来れないけど、それでも本当に良いんだね?  しつこく聞くけど、本当に後悔しないよね!?」  「いいから早く元に戻してください!」  私が声を粗げると、急に湖から突風が吹き荒れる。  芝が風で靡き、彼女が被っていた麦わら帽子が空を飛ぶ。  彼女は自身が被っていた帽子には気にも留めず、私に対して手を振った。  「綾音ちゃん! 最後に言っとくけど、貴女は誰からも愛されてるし、貴女の事を見守ってくれてる人が沢山いる!  いくら逃げ出したいくらい辛い事が起きても、絶対に無理しないで!  自分に負けないでね!  ……貴女が寿命を全うするまで、それまで私待ってるから!  その時はちゃんと、おかえりって言ってあげるからね!」  私の身体が突風に巻き込まれ、宙に浮かぶ。  「ちょっと……おねえさん! 助けて!  私、風で飛ばされちゃうよ! きゃあっ!」  いくら私の体重が軽いとはいえ、人が空中へ何メートルも巻き上げられるなんて……  恐ろしいつむじ風だ。  「じゃあね! いってらっしゃい!」  笑顔で手を振り、見送る女性の姿が遠ざかり、つむじ風に巻き上げられた私は湖へと吸い込まれた。    
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