第三話 取引は天秤により

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 知らぬ間に着せられた薄い青色の病衣。  左腕に繋がれた点滴。  そうか……私はきっと、ネカフェのシャワー室で具合悪くなったに違いない。  私は両手の平を顔に向けて呟くが、答えが分かる訳ない。  すると瞬時に、病室のドア越しからインスピレーションが伝わってくる。  "髪も肌も真っ白なんて、不思議な子……  両親も親戚も居ないし、身分証明になるのは学生証だけ、経歴を調べたら偽造……  おまけに原因不明の症状で急患で運ばれてくるだなんて、今まで無いわ。  面倒ね……いくらここが大学附属病院でも、診断には時間が掛かるんじゃないかしら"  声は聴こえなくともドア越しから私の脳に直接伝わってくるよ、白石 結希(ゆうき)さん24歳独身。医学大学卒業後、現在研修医か。  相手から名乗られなくとも、名前、年齢、大まかな経歴、秒単位での思念と直近の記憶程度なら、私自身に負担を掛けなくても簡単に探れる。  
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