第三話 取引は天秤により

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 家から最寄りの駅で電車に乗り、揺られること数10分。  新宿駅で電車を降り、前から欲しかった雑貨を求め、新宿通の繁華街へ駆り出す。  ……全く、巷では歌舞伎町でトー横キッズ達が(たむろ)って援交したり、夜の大久保公園では立ちんぼが居るとSNSでよく目にするが……  昼間に至っては、昨今問題になっているマルチや新興宗教の勧誘も多々見られる。  騙す側の記憶を辿れば、どいつもコイツもロクな事を考えて無かったり、短絡的な理由で中身がスカスカだ。  美人局丸見え、整形しすぎて原型を留めていない無理に若作りした中年のガリガリババアの思念をここで試しに読み取ってみよう。  "もう少しでノルマが達成できれば、創業者が主催しているパーティに招待されるし、社内売り上げの1%が月謝で貰える! 社内限定SNSのインフルエンサーにもなるために、もっと勧誘しなきゃ!"  社内限定でしか見れないSNSじゃ大衆に宣伝できねーし、どんだけ怪しいもの売ってる事隠して身内同士で搾取しあってんだよバーカ。  だいたい月謝で社内売上1%なんて、そんな聞いたこともない怪しい化粧品会社の儲けなんてスズメの涙どころか、どうせ騙されて変な条件後出ししてくるんだろ、死んどけ。  ……と、相手には届かぬ心の声で、私はおめでたい脳内でパリピしちゃってるマルチ勧誘のババアを罵ってやった。  相手の思念を読み取ったところで、自分の意志が相手に伝わらなければ、どうせ自己満足で完結する。  だから私の、他人の記憶を辿れる能力に嫌気が差して仕方がない。  
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