第三話 取引は天秤により

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 底が少々厚いレザーのロングブーツに、細くて白い生足を大胆に見せた黒いフリルのミニスカ。  小ぶりなサイズの胸元を広く出した肩紐の細い薄手のトップス。  アイドルのようなツインテールに、長い付け睫に(くま)のようなアイシャドウと、ふんわりとルージュが塗られた唇。  耳には大きなリング型のピアスが下がり、極めつけは右肩に、字体を崩しすぎて私では読めない筆記体のローマ字らしきものがでかでかと彫られていた。  「ね? ね? おねえさん?  神様っていると思います? 思いますよね?」  いや、情報量多すぎだろ!  とツッコミたいところだが、どうせ歌舞伎町から暇で新宿まで遊びに来たトー横キッズが、イタズラで勧誘の真似をしてるだけだろう。  たぶん面倒くさい(たぐ)いだ。  無駄だと分かっていながらも、この少女の記憶を辿って、弱点を探って嫌な思い出でも掘り起こして追い返してやろう。  そう思い、私は少女の瞳を見つめて意識を 集中した。  
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