第三話 取引は天秤により

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ーーー……少女は幼少期の頃、父親から虐待を受けたようだ。  離婚後、母親の元に引き取られたが、母親は新興宗教にハマり破産。  中学生の頃に家出した少女は程なくして歌舞伎町で身寄りも行き場も無い青少年が屯するトー横キッズの一員となった。  その後は援助交際や売春によって生計を立てるようになったが、買春した男性客の誘いを信じ、彼女もまた母親と同じ道を辿ろうとしてる……って訳か。  中々複雑な家庭環境で育ち、洗脳状態であることから説得は難しそうだが……  私は少女のしつこい問いに、やっと答えてやった。  「君さぁ、男の客から口車に乗せられて勧誘やってるんでしょ?  いい加減、可愛いからもっと援交のお客さん増えるよとか、教会のお布施を支援金として受け取れるよとか、安い口車に乗るのやめたら?  君の売上げたお金、教会が横取りしたいだけだよ。  そもそも神様がいれば、君は裕福な家庭でご両親と仲良く暮らして学校に行ってる筈だね」  私は嫌味のように、少女の事を知ってる口振りで話す。  当然のように少女は怒りだす。  デリケートな過去を赤の他人に語られるほど頭に来る事は、他にはそうそう無いだろう。    
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