第三話 取引は天秤により

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 支離滅裂な彼女の物言いに付き合いたくなかったが、杉谷が強引に私の手を引っ張ってはしゃぎ、しつこい。  どうも変だ。  先ほどから彼女の思念を読み取り続けているのだが、杉谷が先程から述べている神が現れると予言をしたという"神父様"という人物を、彼女の記憶から遡ってもたどり着かない。  もしや、私の能力では読み取れないほど、杉谷にかけられた洗脳が強すぎて記憶が捏造されているのか?  単刀直入に、杉谷に質問を投げ掛ける。  「神父様って、誰?」  「知らないの? 私たちトー横キッズ達にご飯作ってくれる"マルク·ドラグノフ"のお友達!」  彼女の言う"マルク"という人物は、記憶でも辿れるし、人影を読み取れる。  ただ、どうも気がかりなのは私の記憶が間違いなければ、"マルク·ドラグノフ"は歌舞伎町の元No.1ホスト。  しかしマルクは先月、買春した女性が未成年であると発覚した事が報道され、警察に検挙。  留置場無いで原因不明の死を遂げたとニュースでは語られていた筈では……
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