第三話 取引は天秤により

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 神に興味は無いが、彼女の記憶の中にある"マルク"という存在は生きている。  私は彼女に、こう切り出した。  「杉谷さん、今日の日付と西暦は?」  「ねえ、さっきから何で私の名前を……?」  「いいから、早く!」  「はい!……ええっと、2021年7月1日です!」  理解はし難いが、彼女の述べた日付と西暦を聞いて少々納得がいく。  私が先日、自宅のシャワー室で悪夢のようなビジョンを見て、気が付いてから一年も前の過去に遡っているようだ。  その理由に、マルクは2021年の9月に亡くなっている。  杉谷の言う日付に間違いなければ。マルクが亡くなる2ヶ月前に私は居る、という訳だ。  続けて私は、杉谷にこんな話を持ちかけた。  「杉谷さん、取引しましょ。  "マルク·ドラグノフ"に合わせてくれたら、貴女の言う"神様"っていうの信じてあげる」  
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