第三話 取引は天秤により

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 マルクは鍋でカレーを作っていたようで、ルーを入れる前に灰汁を取り終わった時に手を止めた。  レゲエマンのようなドレッドロックスの髪型に、黒くて丸いレイバン製のサングラスを掛けたマルクの出で立ちは、ハリウッドで撮影された海賊映画の主人公を彷彿させる。  そんな彼が鋭い眼光で、畏まって彼の前で正座する私を睨む。  私とマルク、両者が無言のなか、周囲から思念が伝わってくる。  "あの銀髪の子、めっちゃバリ可愛くね?"  "マルクとこの子、どういう関係なんだろ?"  やはり凄惨な境遇で育った者が多いせいか、哀れみや蔑みの意思よりも、同情の念が私の意識にヒシヒシと伝わってきていた。  数秒ほど私の身体をジロジロと見て、ようやく私に対して口を開く。  「ウチら界隈に紛れたホームレスの胡散臭ぇ神父がいるんだ。  その神父の爺さんがよ、毎日、(うわ)言みてぇに"白い肌"だの"朱色の瞳"だの、"銀髪"のオナゴがどーのこーの呟いていやがる。  神父の爺を哀れんで錦糸町ここら近辺の客が金を恵んだっきり、頭おかしくなったよーに爺さんに洗脳されて、俺ら界隈の仲間らが食えなくて困ってんだよ。  けど、ねーちゃんよ。超能力持ってんだろ?  俺が今言った、神父の爺さまを止めてやってくれることは出来ねえだろうか?」  
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