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マルクは鍋でカレーを作っていたようで、ルーを入れる前に灰汁を取り終わった時に手を止めた。
レゲエマンのようなドレッドロックスの髪型に、黒くて丸いレイバン製のサングラスを掛けたマルクの出で立ちは、ハリウッドで撮影された海賊映画の主人公を彷彿させる。
そんな彼が鋭い眼光で、畏まって彼の前で正座する私を睨む。
私とマルク、両者が無言のなか、周囲から思念が伝わってくる。
"あの銀髪の子、めっちゃバリ可愛くね?"
"マルクとこの子、どういう関係なんだろ?"
やはり凄惨な境遇で育った者が多いせいか、哀れみや蔑みの意思よりも、同情の念が私の意識にヒシヒシと伝わってきていた。
数秒ほど私の身体をジロジロと見て、ようやく私に対して口を開く。
「ウチら界隈に紛れたホームレスの胡散臭ぇ神父がいるんだ。
その神父の爺さんがよ、毎日、譫言みてぇに"白い肌"だの"朱色の瞳"だの、"銀髪"のオナゴがどーのこーの呟いていやがる。
神父の爺を哀れんで錦糸町ここら近辺の客が金を恵んだっきり、頭おかしくなったよーに爺さんに洗脳されて、俺ら界隈の仲間らが食えなくて困ってんだよ。
けど、ねーちゃんよ。超能力持ってんだろ?
俺が今言った、神父の爺さまを止めてやってくれることは出来ねえだろうか?」
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