第四話 秤にかけたものは

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 ……出で立ちは十代半ばの少女。  栗毛色をしたセミロングの髪をフワリと靡かせ、背もたれの無い椅子に座る。  水道蛇口と真っ白で清潔なシンクが付いた黒いテーブル。  ここはどこかの実験室。  蛍光灯がひとつしか付いておらず、部屋に窓はなく部屋の角が薄暗い。  高校の学生服に身を包む少女が白衣を羽織り、黒いテーブルに実験道具の数々を広げた。  薬包紙に白い粉状の薬剤を載せ、上皿天秤によく研磨された白銀の分銅を載せる。  「ジレンマだと重たいか……」  天秤は分銅を載せた皿が傾き、その結果をノートに綴る。  少女は分銅の首をピンセットで掴んで入れ替える。  「デストルドーでも重たい………」  またも分銅を入れ替えると、天秤は暫く左右に揺れた後、平行に釣り合った。  「ふーん、なるほどね。  この場合だと、リビドーが適正なのね」  少女は鼻歌混じりでノートを書く。  実験は続く。  
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