第五話 均衡は左右し

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 私は続けて神父の老人に質問する。  「その"管理者"ってのが、神様ってことなの?」  老人は私を馬鹿にしたように、鼻で笑う。  「この期に及んでまだ"神"と……  もう何度も伝えたが、この際に告げさせてもらおう。  神など居らん。存在しない。神と口に発するだけで白々しい。  ……だがこれ以上、神という概念に対して意見を云えばワシの感情論に過ぎん。  今のお前さんには分からんだろうが、これまたひとつ教えてやろう。  "管理者"は"観測者"や"傍観者"でもあり、  "傍観者"は"管理者"であり"観測者"でもある。  だが、"探索者"は違例中の違例。  これだけは言いたくなかったが、お前さんは"探索者"だ。  つまり世界にとっては、忌むべき存在なのだよ」  やがて老人は項垂れる。  いくら怪異な能力を持ち、それを利用してきた私ですら老人の言うことを理解できなかった。  「私は忌むべき存在……?  生まれつき、この見た目の病気だから?」  「見た目が忌むべきか、など関係ない。  問題はどんな性別や容姿、年齢であろうとも、自身の自覚の有無に関わらず、"探索者"は存在してはいけないのだよ。  宇宙均衡を保った安定を破壊し、混沌へと導く。  今までどの宇宙も、どれも"探索者"によって壊れてきたのだよ」    
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