第五話 均衡は左右し

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 老人は続けざまに述べる。  ………ある者は語った。  歴史は人類が創世して二千年以内の事しか事象は観測できず、それ以外は偶像や虚言に過ぎないと。  ある者は語った。  二千年以内に観測された事象が全てであり、それ以前の事象は机上の空想に過ぎないと。  ある者は語った。  西暦自体が人類の物差しにしかならず、創世を知る術は探求心のみであり、真理を知る必要があるのか、と。  「……我々は何者かの記憶の一辺に過ぎん。  だが、誰の記憶であり、何のために(ことわり)を悟るのか。  その術は何人たりとも無知である」    
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