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携帯の画面に映っていたのは、見も知らぬ男からの着信だった。深夜2時にも関わらず、何も考えずに出てしまったのは間違いだったのかもしれない。それでもそれは僕が出なければいけない電話だった。何故かはわからないけれど、出ない、という選択肢は僕には浮かばなかったのだ。通話のボタンを押すと携帯からは「こんばんは」と言う声(見も知らぬ男の声はもちろん聴いたことのない声だった)が聞こえてきた。 「見も知らぬ男?」 「そうだよ」と僕は彼女の疑問に相槌をうつ。最近何かあった?という質問に、僕は一昨日の電話のことを思い出し、彼女にそれを話しているところだった。どちらかと言うと話は最後まで聞いて欲しいと思っているのだが、彼女はそんな僕の気持ちを余所に質問を挟む。 「見も知らない男、だなんて表現する人がいるなんて知らなかったわ。普通は、知らない男っていうと思うんだけど」 「僕もそう思う」 「え?」 「そう画面に表示されていたんだ」 「画面に表示?つまり“見も知らぬ男”って表示されていたってこと」 「そうだよ。もちろん僕はそんな登録をした覚えなんてないし、そもそも登録するときに“見も知らぬ男”だなんて登録するはずがない。僕も、そんな表現することなんてあるんだ、って思ったくらいだ」 「そう、何だかホラーのようね。深夜2時に、見も知らぬ男からの着信」彼女は自分に言い聞かすように呟くと、コーヒーカップを口に運んだ。 喫茶店には僕らのほかに5名ほどしかいなかったが、狭い店内だったので席はほとんど埋まっている。時計を見るとまだ18時前だった。彼女はコーヒーカップを皿に戻すと口を開いた。 「……それで電話に出た後はどうなったの?」
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