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「……ねぇ、春斗くん。どうして結婚したいの?」
「涼子のことが気に入ったからだ!」
「そうじゃなくて、何か結婚しなくちゃいけない理由があるんだよね?」
「………………」
ずっと強い口調だった春斗が黙り込んでしまった。
そこへ、静かに控えていた白井がそっと話しかける。
「もしや、先ほどのメールで何かございましたか?」
春斗はぎゅっと結んでいた唇をためらいつつ開く。
「……お父さまにずっとお願いしていたんだ。オレも一緒に連れて行ってほしいって。いつも、“もっと大きくなったら”って言われるけど、大きくなるって、大人になることだろう? それでずっと考えて――」
「――結婚すればいいんだ、と思いついたわけだな?」
春斗の言葉を継いだのは、さっきまで笑っていた和真だった。驚いた顔の春斗を見る彼に、子供をからかう様子はない。
春斗は小さくうなずいた。
「……でも、“結婚”ってどうすればできるのかよくわからなくて、幼稚園の先生にきいたら、女の子に“結婚しよう”って言えばいいんだってわかったんだ」
「それでたまたま選ばれたのが涼子だった、と」
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