王様子供

11/17
前へ
/17ページ
次へ
 「……ねぇ、春斗くん。どうして結婚したいの?」  「涼子のことが気に入ったからだ!」  「そうじゃなくて、何か結婚しなくちゃいけない理由があるんだよね?」  「………………」  ずっと強い口調だった春斗が黙り込んでしまった。  そこへ、静かに控えていた白井がそっと話しかける。  「もしや、先ほどのメールで何かございましたか?」  春斗はぎゅっと結んでいた唇をためらいつつ開く。  「……お父さまにずっとお願いしていたんだ。オレも一緒に連れて行ってほしいって。いつも、“もっと大きくなったら”って言われるけど、大きくなるって、大人になることだろう? それでずっと考えて――」  「――結婚すればいいんだ、と思いついたわけだな?」  春斗の言葉を継いだのは、さっきまで笑っていた和真だった。驚いた顔の春斗を見る彼に、子供をからかう様子はない。  春斗は小さくうなずいた。  「……でも、“結婚”ってどうすればできるのかよくわからなくて、幼稚園の先生にきいたら、女の子に“結婚しよう”って言えばいいんだってわかったんだ」  「それでたまたま選ばれたのが涼子だった、と」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加