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「同じ幼稚園の女の子じゃダメだったの?」
「それは、なんだか子供の遊びにしか見えないと思って」
「……なるほど」
涼子は“わたしもまだ子供なんだけどね”とは言わないでおいた。
「お父さまから、“もうすぐ日本に帰る”ってメールが来たんだ。だからオレ、早く結婚して大人にならないと――」
「ダメだよ、春斗くん。結婚には順番があるんだから」
涼子は人差し指を立てて春斗に向かって振ってみせる。
「順番?」
「そう。他人から知り合いになって、友達になり、うーんと大好きになったら恋人になる。それからプロポーズしてやっと結婚だから。わたしたち、まだ知り合いになったばっかりでしょう?」
「そんなに時間がかかるのか……」
春斗の目にみるみる涙がたまっていく。涼子は立ち上がってそばに行くと、ソファーに立ったままだった彼を座らせて、自分も隣に腰を下ろした。
「わたし思うんだけど、お父さんとお母さんが、春斗くんを連れて行かないのは、ちゃんとした理由があるはずだよ」
「……オレが子供だからじゃないのか?」
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