王様子供

13/17
前へ
/17ページ
次へ
 「それもあるだろうけど、きっと春斗くんに落ち着いた環境に居てほしいんじゃないかなぁ」  和真もうなずく。  「海外に行ったら、言葉も食べ物も習慣も、色んなものが違うからな。幼いうちから苦労させたくなかったんだろ」  「じゃあ、オレはどうすればいいんだ? 大人になるまでガマンしなくちゃいけないのか?」  膝の上で握り締めた拳に、ポタリと滴がこぼれる。  「わたしたちには答えを見つけてあげられないけど、もうすぐ帰ってくるなら、お父さんお母さんといっぱいお話すればいいと思う」  「今のおまえの気持ちをぜんぶ話せばいい。それで親の話もぜんぶ聞いて、それから、どうすればいいのかよく話し合え」  「きっといい答えが見つかるよ」  そう言いながら涼子が頭を撫でると、春斗は涙をぬぐってうなずいた。  その後は一緒におやつを食べ、外が薄暗くなり始めた頃、高校生二人はようやく帰ることになった。  玄関まで見送りに来た春斗は、涼子におずおずと右手を差し出す。  「結婚はあきらめるけど、友達になってくれるか?」  涼子は笑顔で手を握った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加