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「それもあるだろうけど、きっと春斗くんに落ち着いた環境に居てほしいんじゃないかなぁ」
和真もうなずく。
「海外に行ったら、言葉も食べ物も習慣も、色んなものが違うからな。幼いうちから苦労させたくなかったんだろ」
「じゃあ、オレはどうすればいいんだ? 大人になるまでガマンしなくちゃいけないのか?」
膝の上で握り締めた拳に、ポタリと滴がこぼれる。
「わたしたちには答えを見つけてあげられないけど、もうすぐ帰ってくるなら、お父さんお母さんといっぱいお話すればいいと思う」
「今のおまえの気持ちをぜんぶ話せばいい。それで親の話もぜんぶ聞いて、それから、どうすればいいのかよく話し合え」
「きっといい答えが見つかるよ」
そう言いながら涼子が頭を撫でると、春斗は涙をぬぐってうなずいた。
その後は一緒におやつを食べ、外が薄暗くなり始めた頃、高校生二人はようやく帰ることになった。
玄関まで見送りに来た春斗は、涼子におずおずと右手を差し出す。
「結婚はあきらめるけど、友達になってくれるか?」
涼子は笑顔で手を握った。
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