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「生意気でエラそうで命令口調。和真のそういう性格を見ていて、わたしがこっそりそう呼んでたの」
心外だと言わんばかりに顔をしかめる幼なじみに、涼子はつい笑ってしまう。
「覚えていないみたいだけど、和真も今日の春斗くんとまったく同じことを言ったんだよ?」
すると突然、「こうだろ?」と言った和真が、ベンチに飛び乗って仁王立ちをしてみせる。
「涼子、俺と結婚しよう!」
彼女は目を丸くした。
「思い出したの?」
「……いや、覚えてたよ、ずっと」
「ずっと?」
「あの時、俺がプロポーズした理由、知ってたか?」
「ううん。何年もたってから、何かわけがあったのかなとは思ったけど」
「幼稚園の先生たちが、“リョウコちゃんがもうすぐ引っ越す”という話をしていたのを偶然、聞いたんだ。それで必死に考えて出した答えが――」
「あ! 春斗くんと同じ!」
和真は照れくさいのか、頭をガシガシ掻いている。
「結婚すれば一緒にいられると思ったんだよな。ところが、先生たちが言ってた“リョウコちゃん”は、隣のクラスの“亮子ちゃん”のことだって後からわかってさ。……ものすごくホッとした」
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