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頭を掻いていた手を下ろした和真は、ふいに涼子をじっと見つめた。
「今のプロポーズ、半分本気だ。昔と同じ返事が欲しいんだけど覚えてるよな?」
――“うん! 和真のおよめさんになる!”――
無邪気に答えていたあの頃の涼子。今の彼女の返事は――
「……順番があるって、わたし、言ったよね?」
「うん? あぁ、でもあれ、“幼なじみ”はどこに入るんだ? 友達と恋人の間か?」
「……幼なじみはちょっと特別な気がする」
うつむいて答える涼子。
「俺もそう思う。――じゃあ、こうしよう」
和真はベンチを下りて涼子の隣に立つと、片方の手を差し出す。
「“王様男子”の命令だ。今日からは“彼女”として俺と手をつなげ。小さい頃に手をつないでいたのとは違うぞ?」
「“王様男子”って何よ?」
横目で見上げながら、ちょっと笑っている涼子。
「もう高校生だからな。“王様子供”から“王様男子”に昇格したんだ」
和真もイタズラっぽく笑う。
「……わかったよ」
涼子はそっと手を伸ばして、“特別な幼なじみ”と手をつないだ。
「“王様男子”な和真の彼女になる」
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