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「涼子! かわいい彼氏が迎えに来てるよ!」
放課後、帰り支度をしていた彼女は、突然、クラスメイトの女子にそんなことを告げられて困惑した。
「……わたし、彼氏なんていないんだけど」
「ちょっとこっち来て!」
クラスメイトは、涼子の腕を引いて廊下に出ると、窓を開けて外を指差した。
「ほら、正門の所にいるでしょ? さっき掃除当番であそこにいたら、涼子を呼んできて欲しいって頼まれたの」
この廊下の窓からは、徒歩や自転車で次々と下校する生徒たちの姿が見える。そんな中に、生徒たちの視線を浴びながら立つ、ひときわ小さな影が一つ。
「あれって、もしかして……」
涼子には心当たりがあった。
教室にとって返すと、カバンを肩に掛けて飛び出す。
クラスメイトの女子は、面白がってこう声をかけて見送った。
「かわいい彼氏によろしくねー!」
その直後、
「今のはどういう意味だ?」
背後に聞こえた低い声に振り返ったクラスメイトは、その顔を見て青ざめたのだった。
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