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急いで校舎を出た涼子を見つけて、正門に立つ小柄な影の主が手を挙げた。
「涼子、オレだ!」
仁王立ちのその姿に、彼女は見覚えがあった。
「やっぱり、この前の!」
その小さな人物は、幼稚園の制服を着た男の子だ。
「オレの名前、覚えているか?」
涼子は腰をかがめて目線を合わせた。
「もちろん! 春斗くんだよね?」
ニッコリ笑いかけると、なぜか目をそらして、ゴニョゴニョと何かつぶやく。
「…………こい」
「なーに?」
聞き返した途端、涼子の手首をつかんできた。
「今からオレの家に来い!」
有無を言わさずグイグイ引っ張る。
「え!? ちょっと待って!」
幼稚園児を振り払うわけにもいかず困っていると、ふいに横から誰かの手が伸びてきた。
「オイ、涼子に何してるんだ? このガキんちょ!」
小さい春斗を押しのけて立ちはだかったのは、涼子と同じ高校の男子生徒。
「和真!」
「涼子、コイツ知り合いか?」
和真は子供の高さに合わせることなくジロリと見下ろす。
「和真、ほらこの前、水族館で――」
「……おまえは誰だ?」
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