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カエデがやっとのことでその路地裏に駆けつければ、秋哉が6人の男たちと殴り合いの真っ最中だった。
秋哉だけが制服で、相手はてんでバラバラの私服姿。
昼間のゲームセンターで遊んでいるような男たちだ。
秋哉は片腕にボストンバックを持ったまま、ひとりの男の腕を背中側で捻りあげている。
次の瞬間、正面からかかってきた相手の腹を蹴り飛ばした。
捕まえていた男には肘を曲げて、エルボーを数発突っ込む。
拘束を解き、持っていたボストンバックを振り回せば、秋哉を囲んでいた人の輪が広がって壊れる。
秋哉は一旦その場を突破してカエデのいる大通りの方まで駆けてきた。
カエデが助っ人として割り込むなら、今のこの瞬間しかない。
そこで、
「来生さん。俺、冬依さんのダチです。一緒に――」
カエデは名乗りをあげるが、秋哉はクルリとカエデに背中を向けてしまう。
「へ?」
思いっきり存在を無視されて、カエデは身体がつんのめる。
秋哉は再び、ひとりきりで、男たちに対峙した。
こちら側までいったん抜けたのは、逃走経路を確保しようとしたのではなく、敵の攻撃を一方向にまとめるためか?
四方八方から殴りかかられたら、さすがに堪ったものではない。
そう思うカエデの前で、秋哉は正面から蹴り込んできた男の足をカバンで受け、片側から飛びかかってきた相手の脛に足裏を軽くあて勢いを殺す。
返す刀で足の軌道を変えた上段の蹴りを、相手の頭めがけてぶっこんだ。
ボストンバックを前に突き出し、それをカバーしようとした男たちの腕を、強烈な回転蹴りでなぎ払った。
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