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プロローグ
黒崎第二中学校の校門の前には、黒山の人だかりが出来ている。
ここの制服は学ランだから、男ばっかり集まっているその集団は、3階の校舎の窓からではただ真っ黒の塊だ。
もう冬も近い晩秋だというのに、ものすごく暑苦しい。
しかしそんな黒山の中心に、ひとりだけ違う制服がいる。
紺の高校のブレザー。
そいつは、
「おう! みんな久しぶりだ」
周りのうっとおしさを吹き飛ばす勢いで爽やかに笑う、真夏の太陽のような来生秋哉。
この中学を1年半前に卒業していった先輩。
しかし、こうやって秋哉を見下ろしている山上楓は、
「あの野郎、またデカくなってやがる」
舌なめずりせんばかりの物騒な目付きになってしまう。
なぜならカエデが入学してきた時、秋哉は3年生で、その整った容姿のせいではなく、腕っぷしの強さでこの学校の有名人だったからだ。
秋哉は中学に入学して早々、上級生たちを叩きのめして、この学校を仕切ってしまった。
腕に覚えがあったカエデは、この噂になっていた秋哉という上級生を倒して、目にもの見せてやろうと血気盛んに入学してきたものだが、
「……」
結局その結末は、山上楓の生き方を180度変えさせることになった。
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