プロローグ

1/4
前へ
/94ページ
次へ

プロローグ

黒崎第二中学校の校門の前には、黒山の人だかりが出来ている。 ここの制服は学ランだから、男ばっかり集まっているその集団は、3階の校舎の窓からではただ真っ黒の塊だ。 もう冬も近い晩秋だというのに、ものすごく暑苦しい。 しかしそんな黒山の中心に、ひとりだけ違う制服がいる。 紺の高校のブレザー。 そいつは、 「おう! みんな久しぶりだ」 周りのうっとおしさを吹き飛ばす勢いで爽やかに笑う、真夏の太陽のような来生秋哉。 この中学を1年半前に卒業していった先輩。 しかし、こうやって秋哉を見下ろしている山上楓は、 「あの野郎、またデカくなってやがる」 舌なめずりせんばかりの物騒な目付きになってしまう。 なぜならカエデが入学してきた時、秋哉は3年生で、その整った容姿のせいではなく、腕っぷしの強さでこの学校の有名人だったからだ。 秋哉は中学に入学して早々、上級生たちを叩きのめして、この学校を仕切ってしまった。 腕に覚えがあったカエデは、この噂になっていた秋哉という上級生を倒して、目にもの見せてやろうと血気盛んに入学してきたものだが、 「……」 結局その結末は、山上楓の生き方を180度変えさせることになった。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加