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カエデが危惧した通り、秋哉は高校で誰ともわからぬ相手からの呼び出しを受けたという。 「サッカー部の連中に迷惑をかけるから、ケンカの呼び出しなら、ずっと断ってたんだけどな」 秋哉はスネたように唇を尖らせ、子どもみたいな顔で言い訳をした。 午後の授業を放棄して学校から姿を消した秋哉を、ヒントもなくこんな街中で見つけ出したのはカエデだ。 冬依の命令だったとはいえ、まさに野生の勘、運が良かっただけとも言える。 カエデの方が年下だが、 「あんな物騒なやつらの呼び出し、ケンカにならねー方がおかしいじゃねぇか」 つい呆れたように言ってしまった。 秋哉はカエデの無礼な口調を気にする様子はなく、 「でもよオレ、あいつらのこと何も知らねーんだぜ。因縁つけられるなんて思わなかったんだよ。なんか大事な話でもあるのかと思ってさ」 この男、天然なのか善良なのか。 どちらにしろ、ゲーセンで遊んでいそうなチンピラ風情と真面目な話が出来ると考えるところがスゴい。 秋哉の性根がいまいち判断できず頭をひねるカエデに、 「で、お前は何? 俺になんの用?」 逆に秋哉の方が聞いてきた。 「トーイの友だちって言ったか。だけどオレから見たら、お前の方がよほどオレにケンカ売ってきそうだぞ」 秋哉はおかしそうに笑うが、確かに、カエデは着崩したシャツの中に派手な色のTシャツ。 履きつぶしたスニーカー。 上着は学校に忘れてきた。 でかいガタイだが猫背で、さっきの遊び人風の男たちより、よほど剣呑な雰囲気をまとっている。 しかし秋哉の方もそれは同じで、有り余るエネルギーをそのまま形にしたような、伸びやかな肢体。 表情が言動と見事に一致するまっすぐな性格。 『あんたこそ、冬依さんのアニキには見えねーよ』 カエデはつい胡散臭げに見つめていた自分に、はっと我に返り、 「冬依さんがあんたを呼んでるんだ」 決まり悪そうに視線を外して、預かった伝言を伝える。 すると、 「トーイが?」 秋哉は一瞬にして表情を険しくした。 ここ数日間の、何かが起こりそうな不穏な空気。 それを一番感じていたのは、冬依の側にいた秋哉だろう。 秋哉はすぐに、 「わかった」 身を翻して走り出す。
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