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冬依に伝言を持ってきた下級生は、
「警察官が呼んでいる」
とはっきり言った。
冬依も、相手が制服を着た警察官だと知っていたわけだし、逮捕されたのが秋哉ではないことを、あの時点ですでに気がついていた。
それなのに、冬依がのこのことついていった訳はなんだ?
混乱する頭で秋哉にそれを尋ねると、
「あぁ!? どうせトーイのことだ。これ幸いと、自分から罠に飛び込んでったんだろ」
懲りずに携帯の操作を続けながら言う。
「あいつ、付け回すばっかでちっとも仕掛けて来ねぇ。面白くねぇんだ。だからいい加減しびれ切らしたんだよ」
秋哉は苛立たし気に、
「GPSもダメだ」
ついに携帯を捨ててしまう。
携帯はアスファルトの上に落ち、パリンと液晶にヒビが入った。
同時にカエデの胸にも、ピシリとヒビが入る。
気がつかなかった!
「GPS?」
痛む胸を押さえながらカエデが聞くと、
「ああ、ウチは未成年の携帯にはGPSが標準装備で、どこにいるかひと目でわかるようになってんだ」
驚くべき過保護な答え。
しかし、
「この前トーイがさらわれた時は、アレがあったから見つけられた」
「さらわれた?」
思わずおうむ返しに繰り返してしまう異常なセリフ。
そんなことがあったなんてカエデは知らない。
ニュースどころか、噂にもなっていない。
しかし秋哉は、
「春休み前だ。あんときはヤクザの下っ端が相手だったからどうにかなったけど、今回はやべぇな」
「!」
『ヤクザが相手で、どうにかなったとか言うのか?』
来生家の過激な基準に再び驚かされる。
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