プロローグ

2/4
前へ
/94ページ
次へ
それは、 「にーちゃーん」 語尾にハートマークがつきそうなくらいの可愛いらしい声で、秋哉に向かって駆けていく華奢な人影。 人影は走る勢いを殺さないまま、 ――ギュッ―― 集団の真ん中に立つ秋哉の腰にしがみ付いていった。 人影は秋哉の腹から顔をあげると、 「お迎え、ありがと」 ニッコリと微笑む。 それは、こちらの目を疑うほどの美少女だ。 間違って空から天使が堕ちてきたのではないかと、錯覚させるほどの可憐さ。 男子の壁に阻まれて、秋哉を遠巻きにしていた女子たちが、 「キャー!」 そろって喜悦の悲鳴をあげる。 「冬依くん、可愛いー!」 爽やかに笑うイケメン高校生と、無邪気に笑う美少女中学生のカップル。 お似合いのふたりが公衆の面前をはばかることなく抱き合う姿は、妄想好きの女子たちを狂喜乱舞させる。 大喜び。 ついでに冬依の会心の笑顔は、野郎どもの心臓も一斉に撃ち抜いてしまったらしくて、むさくるしい男どもの顔がそろってニヤついている。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加