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それは、
「にーちゃーん」
語尾にハートマークがつきそうなくらいの可愛いらしい声で、秋哉に向かって駆けていく華奢な人影。
人影は走る勢いを殺さないまま、
――ギュッ――
集団の真ん中に立つ秋哉の腰にしがみ付いていった。
人影は秋哉の腹から顔をあげると、
「お迎え、ありがと」
ニッコリと微笑む。
それは、こちらの目を疑うほどの美少女だ。
間違って空から天使が堕ちてきたのではないかと、錯覚させるほどの可憐さ。
男子の壁に阻まれて、秋哉を遠巻きにしていた女子たちが、
「キャー!」
そろって喜悦の悲鳴をあげる。
「冬依くん、可愛いー!」
爽やかに笑うイケメン高校生と、無邪気に笑う美少女中学生のカップル。
お似合いのふたりが公衆の面前をはばかることなく抱き合う姿は、妄想好きの女子たちを狂喜乱舞させる。
大喜び。
ついでに冬依の会心の笑顔は、野郎どもの心臓も一斉に撃ち抜いてしまったらしくて、むさくるしい男どもの顔がそろってニヤついている。
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