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「田中さんってば、けっこう大胆なことするんだね。中学生にこんなことして、ただで済むと思ってんの?」 冬依は田中が自分がおかした罪を自覚できるように、繋がれた手錠の鎖をカチャカチャと鳴らしてみせる。 「手錠って、思ってたより固くて痛い。手首に傷がついたらどうしてくれるんだよ」 冬依は前方を睨みながら、運転する田中にたえず話しかける。 車内が静かだと、さっきから冬依の胸ポケットで何度も震える携帯のバイブ音に気づかれてしまいそうだ。 ポケットの上から強く押さえてはいるが、ひっきりなしに電話が着信する。 後で、かけてきた主を殴ってやる、と冬依は固く心に誓っていた。 すると田中は、 「冬依くんこそうれしいなぁ。僕の名前を覚えていてくれたんだね」 ルームミラーの中から後部座席の冬依の顔を覗き込んでくる。 鏡の中でバチリと目が合う田中は、気味の悪い笑顔を浮かべている。 現役の警察官のクセに思い切った行動に出たものだと呆れていたが、田中の眼差しは病んでいる人間のソレだ。 普通じゃない。 「ボクを、どこに連れていく気なの?」 冬依が聞けば、 「ヤダなぁ、そんな怖い声を出さなくても大丈夫だよ。これは緊急避難措置だから」 田中は言った。 「冬依くんをこれ以上、あんなひどい家庭に預けておくわけにはいかないからね。いいところへ連れていってあげる」 「……」
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