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5
秋哉の背中を探して、記憶にある来生家のマンションに向かって走るカエデの視界に、ふと交番の建物が入ってくる。
街角に建っている何の変哲もない普通の交番。
昼をすぎたばかりで暇なのか、3人の警察官が窓ガラス越しに談笑しあっているのが見える。
カエデは足を止めると方向を変え、その交番の入口へと向かった。
開けっ放しのドアをくぐって、
「ちょっと聞きてーことがあるんだけど」
警察官たちに声をかける。
秋哉を追いかけてマンションまで行ってもいい。
でも田中という警察官は、こいつらの仲間だ。
仲間に聞いてみるのが一番手っ取り早いと、動機は単純だったのだが、なんたってカエデの人相が悪かった。
背が高く猫背で、つっかけたスニーカーをペタンペタンと引きずって歩く。
ましてや昼の日中に、態度の偉そうな中学生がひょっこりと交番を訪れたものだから、警察官たちは少し驚いたように目を見張る。
けれどすぐに気を取り直して、
「どうした? キミまだ学校のはずだろう」
瞬間、一足飛びに警官の懐に踏み込んだカエデは、その警察官の腕をとり肩ごしに担いで一本背負い。
「おい、何をっ!」
驚いて静止に駆け寄ろうとした警官には、プロレス技のような横っ飛びの蹴りが飛ぶ。
まともにカエデに蹴り飛ばされた警察官は、事務机まで吹っ飛んで、背中を強打した。
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