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警察が装備している銃は、警察官の身体とワイヤーで繋がれているから、カエデは気を失っている警官から離れるすべはない。
見ようによっては、カエデが警官を人質にとっているようにも見えるのに、善良な日本の警察官は、
「キミ、危ないから。その銃をおろしなさい」
まずカエデの説得を試みようとしてくれる。
腰に持っている銃を引き抜く様子もない。
『ここが平和な日本で助かったぜ』
カエデは内心ホッとしながら、
「無茶はしねーよ。言っただろ。ちょっと聞きてーことがあるだけだって」
言いながら、ギリリと銃の撃鉄を起こした。
「あんたらのお仲間に、田中って警察官がいるはずだ。そいつの居所が知りてーだけだよ」
警察官が所持している銃はリボルバーで、しかも一発目は空砲にしておくことが義務付けられている。
だからたとえ引き鉄をひいても、弾が発射されることはない。
……はずだ。
だのに警察官たちはひどく慌てた様子で、
「キミ、落ち着きなさい。その銃をおろしなさい」
「危ないから、さあ」
両手を振りながら宥めてくる。
しかしカエデは、ますますこめかみに当てる銃に力を加えて、もう一度、
「田中は?」
聞くと、
「田中は今日は非番なんだ。どこにいるかなんてわからないよ」
ようやく教えた。
そんな警察官の返答に、
『ビンゴ!』
カエデは心の中で手を打つ。
この広い街中、田中が勤務する交番に行き当たったことは大金星だ。
どうやら運はカエデにあるらしい。
だからカエデは、
「休みったって警察官ならどこで何してんのか、報告義務ぐらいあるだろう。てめぇらが知らねーんなら、どっか近くにいるはずだ。電話番号教えろ」
気を失っている警官の身体を再び探り、携帯電話を引っ張り出した。
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