116人が本棚に入れています
本棚に追加
田中にかけた電話が、
『繋がった!』
携帯の向こうで響くコール音に、カエデは冬依を探すための糸口を握る。
二度と冬依を見失わないように、細心の注意をはかりながら耳をすませていると、同僚からの電話はさすがに無視するわけにはいかないのか、
「はい、田中です」
電話の向こうに男の声。
「今、どこだ」
カエデは出来るだけ低く聞こえる声で、呻くように聞いた。
相手が見知らぬ中学生だとバレれば、田中は電話を切るだろう。
いきなりの問いに、
「え? どこって……」
田中は口ごもる。
それが疾しい証拠だと、カエデは、
「緊急だ。どこにいるか言え!」
「今は――」
それだけは嘘ではない、カエデの必死な様子が伝わったのか、田中はここと目と鼻の先のコンビニの名前を教えた。
バカにしやがって!
怒髪天をつく形相でカエデは、
「てめぇのやったことは全部わかってる。そこ動くんじゃねぇぞ、すぐ行ってやる!」
握っていた銃を捨てると、交番から駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!