プロローグ

4/4
前へ
/94ページ
次へ
『でもなんで、今更アニキが迎えにくるんだ?』 カエデは首を捻る。 秋哉が冬依と一緒に登下校していたなんて、冬依がこの中学に入学した最初の数日だけだ。 その後は別々。 どんなに顔が綺麗でも冬依は男なので、まあ普通の話だ。 なのに今日は、秋哉が迎えにきた。 冬依の兄の秋哉はすでに高校生で、学校も違うから、わざわざ離れた冬依の中学校まで迎えに来たということになる。 朝も一緒だったらしい。 そこで冬依に理由を尋ねてみたのだが、冬依は、 「別にワケなんかないよ。秋兄の気まぐれ」 カエデには教えてくれない。 「ボクたちは仲良し兄弟だからね。一緒に登校したっておかしくはないさ」 可愛らしく笑う冬依の顔は無邪気そのものだが、だからこそカエデは、 『怪しい』 と思う。 表面はとびきりの美形兄弟。 だけど本当は、ヤバいくらいの物騒兄弟。 秋哉が、そして冬依自身が、一緒の登下校を喜ぶ可愛らしい性格ではないことを、カエデは重々承知している。 だからきっと、冬依の周りで何かが起こっているのだ。 冬依をひとりには出来ない『何か』が、確実に始まっている。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加