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『でもなんで、今更アニキが迎えにくるんだ?』
カエデは首を捻る。
秋哉が冬依と一緒に登下校していたなんて、冬依がこの中学に入学した最初の数日だけだ。
その後は別々。
どんなに顔が綺麗でも冬依は男なので、まあ普通の話だ。
なのに今日は、秋哉が迎えにきた。
冬依の兄の秋哉はすでに高校生で、学校も違うから、わざわざ離れた冬依の中学校まで迎えに来たということになる。
朝も一緒だったらしい。
そこで冬依に理由を尋ねてみたのだが、冬依は、
「別にワケなんかないよ。秋兄の気まぐれ」
カエデには教えてくれない。
「ボクたちは仲良し兄弟だからね。一緒に登校したっておかしくはないさ」
可愛らしく笑う冬依の顔は無邪気そのものだが、だからこそカエデは、
『怪しい』
と思う。
表面はとびきりの美形兄弟。
だけど本当は、ヤバいくらいの物騒兄弟。
秋哉が、そして冬依自身が、一緒の登下校を喜ぶ可愛らしい性格ではないことを、カエデは重々承知している。
だからきっと、冬依の周りで何かが起こっているのだ。
冬依をひとりには出来ない『何か』が、確実に始まっている。
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