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名前と住所を尋ねられ、素直に答える。 やましいことなどないから、国家権力相手に嘘をつく必要もない。 名前を告げると、 「あれ、キミ男の子?」 やっと気がついてもらえた。 ついでに、もう中学3年生なのだと付け加えると、 「ああ、あのマンションの、4兄弟の末っ子ってキミかあ」 どうやら相手は来生家のことをよく知っているようだ。 制服警官の業務には『巡回連絡』というのがあるから、家族構成を知られていても別に不思議ではないが、ただ名前と年を言ったくらいで、すぐにソレだと思い当たることが、来生家の有名さを物語っている。 良い意味で有名なのか、悪い意味でなのかは――、 「冬依くんは、お父さんもお母さんもいないんだってね。大変だね」 「こんなところにひとりでいたのは、どうして?」 「一緒に住んでいるお兄さんは? 冬依くんにちゃんとご飯食べさせてくれている?」 ……後者のようだ。
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