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人の気持ちに敏感な冬依は、すぐにこの警官が来生家の兄たちに良い感情を持っていないことを悟った。
「冬依くんのお兄さんたち、確か夜の仕事とマスコミ関係のお仕事だよね。家に誰もいなくて、冬依くんは家にひとりぼっちなのかな?」
兄たちの仕事は、正確には調理師と雑誌記者で、中学生にもなった男子が家で留守番していても、虐待でも何でもない。
それに家には、ずっと鈴音がいる。
冬依の身の回りの世話もご飯の支度もちゃんとしてくれる。
そんな来生家の実情を知りもしないで、自分の尺で兄たちを計ろうとする警察官を、冬依は一発で嫌いになった。
これで相手がただの一般人だったら、売られたケンカはきっちり買うのが、来生家の家訓。
だけど今回の相手は、国家権力をバックに持った警察官だ。
逆らってみても、来生家にメリットはない。
だから冬依は、
「帰ります」
無愛想に告げて立ち上がる。
こんなやつ、口をきいてやる価値もない。
ところが、
「ちょっと待って、冬依くん」
警察官は冬依の肩を掴んで引きとめる。
「家まで送るよ。いろいろ話を聞かせてもらえるかな」
何を話せというのだろう。
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