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なんだか腹に落ちない消化不良の感は残るが、当事者の来生家全員の総意ならカエデはもうそれ以上、口を挟むわけにはいかなくなった。
それに秋哉が、
「さすが、悪党は悪党の考えることが、よくわかってんだなぁ」
究極の正論を述べてくれたので、思わず、
「ああ」
納得してしまう。
もちろん秋哉は、
――ゴン――
夏樹に一発殴られていたが。
「それに冬依もだ」
いきなり矛先を向けられて、冬依はちょっと身構える。
夏樹は、
「家族に隠し事はしない。それがウチのルールだろ」
「だって……」
それでも反論しようとした冬依に、
「春が出てきたら、こんなもんじゃ済まなかったぞ」
その名前にぴゃっと姿勢を正す秋哉と冬依。
「ハルは知らないんだよな?」
「春兄には知られてないんでしょう」
同時に尋ねる弟ふたりに、夏樹は、
「さあな。俺はしゃべってねーけど、春が知ってるかどうかまではわかんねー。地獄耳だからな」
夏樹以上の地獄耳が、この上にまだいるのか、とカエデは呆れる。
雰囲気的に長兄のことだろう。
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