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つい見惚れてしまったが、遠く聞こえるパトカーのサイレン音に、カエデはハッと我に返る。
この裏路地は大通りからは目につきにくいが、別に塀に囲われているわけではない。
秋哉の足元には6人もの男が累々と屍を晒しているし、ちょっと覗き込めば、何があったかなんて一目瞭然だ。
「来生さん、こっち」
カエデはパトカーの音から逃げ出すように、奥まった路地に向けて走り出す。
しかし秋哉が、
「おう……、って、お前誰?」
この期に及んで呑気な調子で口にするので、
「オマワリがそこまで来てるんだ。逃げなきゃパクられる」
ドラマの悪役みたいなセリフを口走れば、
「お!? そりゃ、ヤバイな」
後からノリよくついて来た。
「……」
この人は、少し他人を疑うということを学んだ方がいい。
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