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覚えてるはず、ないか。
「せい人式の夜、校門にしゅう合!」
そのメモを見つけたのは、大学進学にむけて引越し作業をしている時だった。
お菓子の缶に入っていた小さな紙に、昔ハマっていたキャラクターのシール。懐かしいと同時に、思い出せないもどかしさを感じた。かすかな記憶をたぐり寄せながら、そのピースがはまったのは、缶の底にくっついていた、小さな手紙をよんでからだった。
「えりちゃんへ」
で始まる幼い並び。しめくくりは「ジュンより」
そうだ。ジュンくん。
その文字を見て、波が押し寄せるように過去の記憶がよみがえった。
ジュンくんと私は幼稚園が同じで、仲良しだった。いや、大好きだった。名前なんて知らない、幼い恋だったけれど、私は彼が大好きで、きっと彼も。
それが、小学校2年生のときに、ジュンくんが転校することになって、それで…
2人でタイムカプセルを埋めた。
何を入れたかなんて覚えていない。
でも、それを掘り起こす約束を、私たちは確かに決めた。
それが、今日。
あの頃は、成人式なんて何なのか分かってなかったんだろう。
成人式の日なんて、忙しいに決まっている。朝から着付け、式の後は着替えてパーティ。学校の同窓会もあるし、クラス会だってある。
それを断ってでも、私はここに来たかった。ジュンくんのことなんて、思い出すこともなかった。それでも、好きだった彼に一目会いたいと思った。きっとこの約束は、小さい私が繋いだ、たった一つの希望だったのだから。その微かな希望に掛けてみたかった。
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