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話に花が咲いたころ、タイムカプセルが顔を出した。
何重にも包まれたお菓子の缶。
遠い日の忘れ物。
そこに込めた想いを解き放つ。
中には、たくさんの写真が入っていた。
2人で写った写真を、並んで眺めた。
笑顔で収まった男の子のクリっとした瞳に、懐かしさが込み上げてくる。それから、堰を切ったように思い出が流れてきた。
遠足で行った動物園。
いじめっ子とジュンくんのケンカ。
泣いた私をなぐさめてくれた保健室。
2人で見た帰り道の夕焼け。
些細な出来事が愛おしかった。
抑えきれずに語る私に、ジュンくんは優しく合図ちを打ちながら聞いてくれた。
「私、あの時、ジュンくんのこと好きだったんだよ」
あの時は言えなかった一言を、冗談っぽく言った。
すると彼は、微笑んだまま
「両思いだったんだね」
と返した。
「じゃぁ、ちゃんと告白しておけばよかった」
私はおどけて笑ってみた。
胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。
初めての恋、切なさがよみがえる。
「また会えるかな」
彼は言った。
「また会おう」
私は笑顔で返した。
次会ったら、何か始まるわけではないけれど、幼い私たちの望んだこの再会を繋げたいと思った。
携帯電話に新しく増えた「淳」の文字がくすぐったい。
これから、色々な話がしたい。彼と、ゆっくり空白の時が埋まるかもしれない。
大好きだった人もきっと同じ気持ちで、またゆっくりと微笑んだ。
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