時のオトが聴こえる

１

あの日、あの時、わたしはまだ、とても幼かった。

３歳で、無知で、無邪気で。自分の身の廻りで何が起きているのかなんて、まったく分からなかった。

もちろんそれは、当然母の方も分かっていたはずだ。

それなのにわたしに対してなんの説明もしてくれなかったのは、説明しても理解してもらえないだろうと思ったからなのか、もしくは自分自身いっぱいいっぱいだったからなのか、あるいはまだ幼いわたしの事を慮ったからなのか――それは、分からない。

ただ、その時母とやりとりした会話の内容は、今でもよく憶えている。

わたしが放った、『あの言葉』も。

――サナちゃんがね、しょうらい ね、とけいやさんに なってね、おかあさんのとけい、なおしてあげるよ。

……そして、あれから２０年。
２３歳になった今でも、あの約束は未だ果たせていない。