第1章

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最近では、メールよりもアプリでのやり取りの方が重宝されているが、僕はメールの方が好きだ。 手紙をもらっている気持ちになれるからなんて現代っ子たちからみれば、僕は時代遅れな人間なのかもしれない。 なんて、ぼんやりと考えながらベッドに転がりながらメールを開くと幼馴染みの梓からだった。 彼女は同年代の中で唯一、僕の事(アプリでの連絡よりメールでの連絡の方が好き)を理解している人物だといえる。 だが、中学校を卒業してから別々の高校に進学したため、昔のように会う機会が減っていた。そんな中、久々に連絡が来たので、一体なにがあったのかと思い、メールを開いた。 『from琴乃 梓 to針谷 真弥 件名:無題 本文:お久しぶりです。元気にしてますか?  お互い別々の高校に進学してから、前のように話す機会が減ってしまいましたね。また、前のように他愛も無い話をしたです。  ……なんて、久しぶりなのに固すぎるかもしれないね。  本当は、真弥に直接会って伝えるべきことなんだけど、私には時間がないから、メールで伝えるね。 突然で驚くかもしれないけど……』 そこまで、読むとタイミングを図ったかのように、携帯に着信が入った。 「はい、もしもし」 電話を取ると、梓の母親からだった。 「真弥くん! 梓が……、交通事故に合って……。 今、市立病院で…、信号無視をした車に跳ねられて…… 」 泣きながら電話を掛けてきた梓の母親の話を聞きながら、僕は家を飛び出した。 市立病院まで、バスを使えば15分位だが、バスを待つ時間が惜しい。ならば、自転車で向かえばいい。 そう考え、梓の母親からの電話を切ると、携帯にはさっき読んでいたメールの続きが画面に表示されていた。 『実は、真弥のことがとっても好きだったんだ。いや、今でも好きです。 ……驚いた? けど、嘘じゃないよ。 いつも真弥は、自分のことを「時代遅れ」なんて言ってるけど、私はそうは思わないよ。だって、「時代遅れ」だって言われたものがないと、新しいものなんてできないもん。 だから、私は真弥のことが好き。いつまでも古き良き時代のものを大切にしている真弥が。 って、言っときながら、自分でも何を伝えたいのか分かってないんだよね……。 今度会ったときには、きちんと伝えられるようにまとめとくね。 じゃあ、また』
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