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「言い逃げなんて、卑怯だよ……。 ちゃんと、返事させてよ……、梓。」
そう呟くと、僕は急いで自転車を走らせた。
家を出て、15分。
市立病院の駐輪場に自転車を止め、梓のいる病室へと向かった。
いつもなら、30分以上かかる道のりを僕は半分の時間で着いたのは、ある意味奇跡なのかもしれない。
行く先々の信号が、タイミングよく青になるなんて、滅多にない。
こんな奇跡なんて、起きなくていい。
今はただ、梓が無事なら……。
そんな事を考えながら、あらかじめ梓の母親に教えて貰った病室に向かう。
「梓!」
扉を勢いよく開けると、
「真弥! ここは、病院なんだから 静かに扉 開けないと!」
中学時代と変わらない、元気な声が帰ってきた。
「……え? あ、梓。交通事故にあったんじゃ…… 」
ずいぶん、間抜けな顔になっているのだろう、梓はプッと吹いていた。
「笑い事じゃないだろ!」
「そうだね。なんか、久々に真弥の間抜け顔みて、耐えられなかった。ごめん。
……うん、あったよ。ほら」
そう言うと、掛けられていた布団を捲った。
そこには、包帯がぐるぐる巻きにされた左足があった。
「信号無視した車に跳ねられて左足を骨折しただけだったんだけど、なんか出血が多かったみたいで……。 みんな、大騒ぎしすぎだよ! 」
「……じゃあ、あのメールはなんだったんだよ!」
笑いながら話す梓が気に入らなくて、怒鳴るように切り出した。
「……自分だって、もしかしたらを考えてたから、あんなメール 送ったんだろ!」
「……」
「なんとか、言えよ! 」
怒鳴る僕をみて、梓はゆっくりと語りだした。
「……真弥の言う通り。ほんとは、死んじゃうかもって思った。だって、事故に合うなんて予測できないもん。だから後悔しないように送った。いつかちゃんとして文章で伝えようと思って準備してたけど、上手く纏まらなかったんだけどね」
そう言うと、梓は布団に潜り込んでしまった
「……ちゃんと伝わったよ。 梓がどれくらい僕の事が好きなのか」
「……え」
「なのに、梓は答えを聞かず、逃げようとしたからさ……。 僕も梓の事が好きだよ。こんな時代遅れな僕を好きだと言ってくれる梓が」
驚いて布団から顔を出した梓はうっすらと赤い顔をしていた。
そんな事件があってから、僕たちは頻繁にメールをするようになった。
それは、幼馴染みだからではなく 恋人として。
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