落とし物

　コンビニへの買い物途中、道に、手袋が落ちているのを見つけた。
　誰の物かも判らない、片方だけの真っ赤な手袋。
　拾うどころか触る気も起きなくてそのまま放置した。
　別の日、その道を通ると人だかりができていた。噂に耳を傾ければ交通事故があったとかで、事故に遭った人の一人が、腕を切断するレベルの大事故だったとか何とか。

　通勤途中、道に、靴下が落ちているのを見つけた。
　靴ならまだしも、どうして靴下？
　真っ赤な色靴下が、片方だけの落ちていること自体が奇妙すぎて、やっぱりそのまま放置した。
　数日後、その付近で事故が起きた。新聞記事になるレベルの交通事故で、一番被害の大きかった人は、足を失ったと書かれていた。

　近所を歩いている時に見つけた帽子。
　今までに見た手袋や靴下と同じ、真っ赤な色のそれが道に落ちている。
　迷ったけれど、拾い上げ、近くの電柱に引っかけた。他に置く場所がなかったからの処置だけれど、地面に放置よりはマシだと思ったから。
　少し立ったある日、そこで事故が起きた。今度も交通事故。被害者は頭に怪我を負ったという。でも幸いなことに軽傷で、命に別状もなければ、頭部のどこかを切断ということもなかったらしい。

　…この先、道に落ちている衣服の類を見つけたら必ず拾おう。そして可能な限り、どこか、安全そうな場所に移動させよう。
　今まで目にした品々が、事故と何か関連しているのかどうかは判らないけれど、自分の気持ちの問題で、これからはそうしようと思った。

落とし物…完