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「此処だ」
そう言ってドアをスライドさせると、個室のベッドに上半身を起こしている佳奈ちゃんと目が合う。
「おにい、誰を連れてきたの?」
ジト目になる佳奈ちゃんに、クスリと笑って声を掛ける。
「久し振りだね、佳奈ちゃん。入院したって言うから驚いたけど、元気そうで良かったよ」
当時の様な低い声で。
「えっ、ええっ!?まさか早雪くんっ!?」
驚く佳奈ちゃんに頷いて、お見舞い、と小さいクーラーバッグを差し出す。
「突然で自分家用のを持ってきたから、3つしか無くて申し訳無いんだけど、俺の手作りだから」
そう言うと佳奈ちゃんは受け取って、バッグのファスナーを開けて中を覗いた。
「プリン!え、早雪くんが作ったの?凄い!綺麗!」
喜ぶ佳奈ちゃんに良かったとホッとしていると、後ろのドアから2人の男女が入ってきた。
1人は稜也と佳奈ちゃんのお母さんの稜子さん。
なので挨拶をしようと思ったが。
男性を見て、固まってしまった。
男性の方も驚いて、あ、と固まる。
「あら、どなたかしら?」
稜子さんの言葉に稜也が、早雪だ、と返すと、あらあらあら!と笑顔になる。
慌てて、お久し振りです、と頭を下げると。
「え、市原さんが早雪君?え?」
男性が混乱していた。
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