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さて、着ていくものがあったかな?
当時の男物の服は当然小さくて、着れたものじゃ無い。
ならいっその事、今の普段着で行ってみようか。
時効だから、とカミングアウトしても、気持ち悪がられ無いだろうか。
当時はあんなに泣いたのに、何でシレッと会おうとしてるんだろうな、俺。
もう一度深い溜め息を吐いて、俺は携帯の電源を入れる事なく、そのまま眠りについた。
でもそれは、後で後悔する行動となったが。
朝起きて一応確認、と電源を入れると、それから何通もそいつから返事を求めるメールが。
何やってるんだ。
『夜中は電源切ってるんだ。今メール見た。今から行く』
早く会いたいだの、直ぐに来いだの、何で返事をくれないんだ、だののメールを見て、頭を抱えた。
はぁ、無理に当時の格好をするのは諦めるか。
今から男物の服を買いにはいけないよな、こんな朝早くから開いてる店なんて無いだろうが。
どうせ成長期の幼い身体ではもう無いから、当時の格好をしても無理があるし。
何時も通りに薄く化粧もして、紺のワンピースにヒールの低いパンプスを履いて。
これでは少し寒いか、と薄手のコートを羽織る。
どう思われるだろう、と不安になりながらも、出掛ける事にした。
我が家では、出掛けるのには場所と会う人物を報告しておかなくてはならない。
なので報告すると。
それなら近くを通るから、と昌(まさ)くんが車で送ってくれた。
近くでなくても送ってくれるんだろうけど。
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