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へ?
戸惑っていると、運転席に座った稜也が俺に覆い被さる。
至近距離での息遣いにドキドキする。
何だよ、近いよ。
そう言おうとして、遮られる。
「早雪、会いたかった。こんなに綺麗で可愛くなって……反則だろ」
稜也はそう言うと、自分の唇で俺の唇を塞いだ。
……何を。
息が止まる。
押し付けられた唇の感触に意識が集中する。
ふ、と離れたと思ったら、今度は啄む様なキス。
頬に添えられた稜也の手が熱い。
いや、熱いのは俺の頬か。
「な……にを」
唇が離された隙に、戸惑いを口に出せば。
「急に居なくなって、心配したんだぞ。かとやんが大丈夫だと言ったけど、着信拒否だし、メールは送れても返って来ないし。来たと思ったら『ちゃんと生きてる』とか、安心出来る要素が全く無いし」
額をくっ付けて、矢継ぎ早に言う稜也。
かとやんは当時の俺達のクラスの担任の加藤先生。
俺の事情を知って色々と配慮や心配をしてくれた恩師だ。
なので、かとやんとは今でも連絡を取り合っている。
「ゴメン。リハビリ中は当時関わってた人間と連絡しない方が良いって事で」
最もらしい嘘を目を伏せて返すと、稜也は信じた様で、そっか、と俺の頬から手を離した。
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