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「佳奈ちゃん、大丈夫なのか?」
流れる景色を見ながらポツリと尋ねると、あー、と気不味そうな声。
「実はただの盲腸なんだ」
「はっ!?盲腸!?」
ちょっ、呼び出されるから、何か命にかかわる病かと思ったじゃんか!
怒ろうとした俺に、稜也はチラリと俺を見て。
「早雪の方が重症だったみたいだよな」
困った様な顔をした。
「性同一性障害、だっけ」
呟いた稜也に、思わず低い声が出る。
「おい、医大生。お前、俺の何を見てるんだ?ちゃんと観察してみろよ」
呆れてそんな事を言ってしまって、後悔した。
医大生ならちゃんと見ればわかるだろ、と思ったのだが、まるで自分をじっくり見て欲しいと言ったみたいで、恥ずかしい。
外を向いた俺をチラ見して、稜也は病院の駐車場に車を停めると、どれ、と俺を見始めた。
どぅぇーい!
恥ずかしくて顔を向けられないじゃないかぁ!
何を言ったんだよ、俺ー!
と、稜也の指が俺の喉に触れる。
丁度、喉仏の部分。
「あれ?え?……早雪さん?まさか……」
やっと気付いたか。
心なしか顔を青くする稜也に、ボソッと告げる。
「これが本当の俺の姿だよ」
目を見開いた稜也は、なんでだよ、と茫然としてしまった。
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