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「あの時はいく場所が彼処しか無かったから。男のフリして、置いて貰うしか無かったんだよ」
そう言うと、稜也は。
「なっ、どうして俺に話してくれなかったんだ!」
怒ったのか、怖い顔で俺を見つめる。
「あのなぁ、やたらとスキンシップを求める同室の男に、自分が女だと告げるなんて自殺行為、すると思うか?」
そう睨んで返せば、うっ、と息を詰まらせる。
「男だと思ってた癖にキスをしてくる奴にそんな事を言ったら、何されるかわかったもんじゃ無いだろ」
追い討ちをかけると、済まん、と項垂れる。
あの寮の部屋で、稜也は何かと言うと俺に、挨拶だ、と触れるだけのキスをした。
この海外かぶれが!と俺は何時も怒っていたけど。
ま、好きな奴からされるキスが嫌な筈も無く、抵抗しなかったんだけどな。
それでも、想われてる訳でも無いのにそれ以上は辛いから、と抱き付いて来ようとするのを避けていた。
「で?佳奈ちゃんのお見舞いに行くんだろ?」
わざとらしく溜め息を吐いてから言えば、稜也は頷いて車から降りた。
助手席に回ってドアを開けると、俺の手を取って車から降ろす。
手慣れてるなぁ。
ちょっとモヤッとするのに気付かないフリをして稜也についていくと、1つの病室の前で立ち止まる。
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