彼女がオジサンになってしまいました……

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最悪だ…この世の終わりだ…。僕がそう嘆いているのは、何も本当に世界が終焉を迎えようとしているからではない。原因は、目の前の彼女にある。 「ヒロシ君、ブラのホック……閉めて?」 「ごめんハナさん、扉閉めるね」 受け入れがたい現実を扉で遮断し、ため息を吐いた。本来であれば、その場で小躍りしたくなるような台詞だが、今はホックではなく首を絞めたくなってしまう。なぜなら彼女は現在、オジサンだからである。 頬をほんのりと赤く染めて、目を潤ませている、この筋骨隆々オジサンの中身は、僕の彼女の高嶺 華(タカミネ ハナ)さんだ。生まれて17年、初めて出来た彼女だ。外見もさることながら、天然で、言動が可愛らしくて、少し大胆な、僕の好みにぴったりの女の子だ。 この僕、土円 博(ドマル ヒロシ)はつい先日、高嶺の花であるハナさんと交際することになった。昔から「幸、薄し」と、からかわれていた僕にとってはまさしく、人生の絶頂期だった。そう思っていたのも束の間、この世は終わりを迎えた。 今朝彼女は、自宅の階段から転げ落ち、父親と頭をぶつけて、体が入れ替わってしまったのだという。結果、彼女はオジサンになり、オジサンは彼女になった。 僕は「大事な話がある」と彼女の家に呼び出されて、自室に籠るブラジャーホックオジサンの姿を拝見したという訳だ。ははっ、死にたい。
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