3人が本棚に入れています
本棚に追加
「今からでも遅くない、穿かせてこい」
「嫌です!」
「仕方あるまい。もしも行ってくれるならワシのパンツを」
「何故オジサンパンツで釣れると思った!?何故学習しない!?」
「仕方ないのぉ。三千円やるから行って来い」
「費用対効果って知ってますかぁ?とにかく、僕は何と言われようが行きませんからね!」
僕がそう言うとオジサンは、ハナさんが今まで見せたことがないような表情で、僕を睨みつけた。
「ハナの事、見捨てるんか?」
「いや見捨てるとか、そういう話では無いじゃないですか」
「そういう話じゃ。ここで行けんかったらな、結局見捨てるっちゅうことじゃ!」
見捨てる?ハナさんの事を?
確かに僕は、彼女の姿をまともに見ることが出来なかった。いつも優しかった彼女に、優しく出来なかった。それがハナさんを見捨てた事になるのだろうか?
その答えは目に見えていた。なぜなら僕は、オジサンの姿をまともに見ることが出来なくなったからだ。
「……今日は帰ります。元の体に戻ったら連絡してください」
「あ!こら!待たんかい!!」
叫ぶオジサンに背を向けて、僕は彼女の家を出た。見たくない現実を、全て置き去りにして。
最初のコメントを投稿しよう!