原始人に文明を伝えようと頑張ってみた話

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「最悪だ‥‥この世の終わりだ‥‥」 俺は燃え盛る炎を見て途方に暮れた。 どうしてこんな事になってしまったんだろう‥‥? どーも、トーテムポールです。チョリーッス! 神メンの拡大解釈──もとい、斜め上な解釈によるチートを得て、現代日本人から異世界のトーテムポールとして転生を果たして早くも一か月が経ちました。手も足も出ず、身動きのとれない状態ですが俺は元気です。叫んでいいッスか? 『人との触れ合いをキボーーーんんぬっ!!』 孤独です。 周りをたくさんの人々に囲まれていますが、めちゃくちゃ孤独です。 なぜなら言葉が喋れないからです。 なぜなら俺がトーテムポールという無生物だからです。 「ウッホッホ!ウッホッホ!」 「ンババっ!ンバンバ!」 そして人語を解する人がいません。 とりあえずオーバーリアクションで叫んでおけばいいや、みたいな適当コミュニケーションをとる原始人しか周りにいません。 孤独です。泣いていいッスか? 『話が違うにも程があるやろがぁああああ~~!!』 そもそも、俺をこの世界に転生させた本来の目的は、高度な文明を持つ世界の人間とこちらの世界の人間を接触させて、良い刺激を与えようというものだったはずなのに。あのクソ神がよりにもよって声帯を持たない無生物なんかにしちゃったせいで、誰とも接触出来ないっていう本末転倒な事になっている。 『後先考えて行動しろぉおおおお~~!!』 もう手遅れだけどね?もう転生しちゃった後だから、どうにもならないけどね?! くそう!このまま誰とも触れ合えず語り合えず、孤独なまま死んで行くのか?! っていうか俺、トーテムポールだけど普通に死ねるのか? 『せめて畳の上で死にたい!直立はイヤだぁあああああーー!!』 屋外で野晒しのまま、トーテムポールとして朽ち果てて行く未來を想像して泣けた。最期は畳の上で家族に看取られながら穏やかに迎えたかったのに、こんなの切なすぎる。 俺は魂の底から叫んだ。 どうせ誰にも聞こえないんだ。エブリデイをシャウトしまくりながら過ごしても問題はないはずだ。 するとその時。 「アウッ?!」 俺の周りで奇怪なダンスを踊っていたメンバーの一人が、奇妙な反応をした。 「あうあうっ?!」 忙しなく辺りを見回しながら、しきりに首を捻っている。 まさか──?! 「俺の声が聞こえるのかっ?!」
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