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彼?果たして彼なのか彼女なのかどうか、それどころか生物なのかすら判らない。
姿は二足歩行の人の形をしてはしているものの人ではない。青白い発光体だった。
「もう一人いるハズなんだ!」
発光体はピクリともしない。
解らないか?そもそもこいつは何なんだ?いやそんなことは今はどうでもいい。
「お願いだから・・・あと一人助けてくれ。頼むよ。」
ボクは人差し指を立ててから、彼らが出て来た方向を指差した。
目の前の発光体はその方向を振り返ってから、杏奈を静かに降ろすとボクに託して寄こした。
そして・・・のっぺらぼうの様な顔がボクの顔を見つめてきたかと思うと、その口のあたりがぽっかりと開かれた。
途端、そこからキーンという耳障りみたいな高周波を発し出す。
鼓膜を抜け三半規管までも揺さぶるその激しいノイズに、たまらず耳を塞いでみるが、全く意味をなさない。
まるでボクの手から骨伝導するかの様にノイズそのものが脳の神経の隅々にまで侵食して響き渡ってくる。
強烈な痛みによりたまらず発狂してしまうかと思った瞬間、突然ボクを苦しめていた騒音がぱったりと鳴り止んだ。
恐る恐る目を開くと、そこにはボクと杏奈の2人しかおらず、あの奇妙な人型の発光体は姿を消していた。
廊下の向こう側から、瓦礫を倒す音だけが聞こえてくる。
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